不妊専門鍼灸院 銀のすずは
自然妊娠から体外受精までの方を専門でサポートしています。

排卵誘発剤は怖い?


排卵誘発剤、クロミッド、銀座

タイミング、人工授精、体外受精に至るまで使われる排卵誘発剤。
種類も方法もたくさんあるし、体に負担はないのかという不安もあるかと思います。
そこで薬についてご紹介します。
まず大原則ですが、薬は効果がありますが、当然副作用もあることを知っておきましょう。
当然、処方薬なので医師、薬剤師は理解したうえで処方しております。

不妊治療、体外受精、銀のすず
飲み薬 クロミッド(成分:クロミフェン)

通常、排卵がない方へ、最初にクロミッドが試されます。
クロミッドは、比較的軽い排卵障害があるときや排卵のリズムが不安定で性交のタイミングを取りづらいときなどに処方されるスタンダードな排卵誘発剤です。
通常、生理(月経)の5日目から1日1錠、5日間内服します。
クロミッドの成分であるクエン酸クロミフェン(Clomifene citrate)は、脳の視床下部や脳下垂体に作用して数段階のホルモン分泌を経て、排卵が誘発されます。
FSH(卵胞刺激ホルモン)」と「LH(黄体刺激ホルモン)」の分泌を促します。
この2つのホルモンが分泌されることで卵胞が成熟し、排卵が促されます。

また、男性不妊症に対して使用される場合もあります。
この場合にも性腺刺激ホルモンが増加することにより睾丸に作用し、結果として精子形成を促すと報告されています。

副作用
クロミッドの副作用は少ない方だといわれています。
個人差はありますが、頚管粘液の減少や子宮内膜が薄くなるなどの悪影響が報告されております。
効き過ぎた時は、卵巣が腫れてくる場合があります。

主な副作用は
・下腹部の張りや痛み
・イライラ感
・頭痛
・物がかすんで見える、虚血性視神経症
・霧視等の視覚症状
・発疹
・精神変調頭痛、情動不安等
・AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇
・ビリルビン上昇、γ-GTP上昇
・悪心、吐き気、吐く、食欲不振
・顔面潮紅、尿が増える、口が渇く、疲労感
もし、視覚症状に関する副作用が生じた場合には、目の検査が必要となる場合があります。


セキソビット(成分:シクロフェニル)

セキソビットは、生理がこない「無月経」や、生理周期が長い「稀発月経」などの排卵障害に対して改善効果を発揮します。
通常、生理(月経)の3日目もしくは5日目から1日4~6錠、5~10日間内服します。
セキソビットは、シクロフェニルという成分を含む、錠剤タイプの排卵誘発剤です。
セキソビットも、「FSH(卵胞刺激ホルモン)」や「LH(黄体刺激ホルモン)」の分泌を促して排卵を誘発する薬ですが、クロミッドに比べると効果は少し弱くなります。
そのぶん副作用も少ないため、排卵障害が比較的軽いときや不妊治療の初期段階で使われることが多くあります。
また、クロミッドとは異なり、子宮内膜が薄くなる、子宮頸管粘液の産生が少なくなるといったことが起こりにくい、というメリットがあります。

副作用
セキソビットの副作用は少ないですが、以下のような副作用があらわれることがあります。
主な副作用は
・下腹部痛
・吐き気、眩暈
・発疹
・食欲不振
・頭痛
・胸の張り
・不正出血
・肝臓機能の低下
・卵巣過剰刺激症候群
・多胎妊娠


アロマターゼ阻害剤
乳癌の治療に用いるアロマターゼ阻害剤がエストロゲンの酵素反応を抑制することから排卵誘発に応用されます。
薬品名はフェマーラ(レトロゾール)などがあります。
ホルモン投与を避けたい場合に有効です。
子宮内膜の発育が抑制されたり頸管粘液が減少したりする副作用も少ないというメリットがあります。
排卵誘発剤として一般的なクロミフェンと比較すると排卵誘発率が低いとされています。

主な副作用は
・吐き気、下痢などる
・倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸など
・血栓梗塞症:手足のまひやしびれ、しゃべりにくい、呼吸困難など
・関節痛、ほてり、疲労感、骨折(骨粗しょう症)など


テルグリド(成分:テルグリド)現在販売中止
テルグリドは、排卵を抑制する「プロラクチン」というホルモンの数値が高すぎるときに使用される内服薬です。
※プロラクチンは、脳下垂体で分泌される女性ホルモンの一種です。
テルグリドは、イネ科植物の花穂に寄生するキノコの仲間(真菌植物)の麦角の誘導体で、プロラクチンというホルモンの分泌を抑制して乳汁漏出症や排卵障害の改善、下垂体腺腫の縮小に効果を発揮します。
出産後の授乳期には排卵・月経がしばらく起こらない期間がありますが、これもプロラクチンが関係しており、排卵を抑えることでさらなる妊娠を防ぐ効果があります。
しかし本来、授乳すべき時期以外にプロラクチンが多く分泌されることがあります。
それにより、乳中が出るだけではなく、排卵が抑えられて月経の停止や無排卵などの生理不順や、流産を引き起こしてしまうため不妊の原因となってしまいます。
実は女性だけでなく男性にも分泌されており、男性にとっては、精嚢腺や前立腺といった性機能の発育を促す役割を持っています。
テルグリドは、基本的には1日2錠、毎日続けて飲む薬ですが、症状に応じて量を減らすこともあります。

副作用
・急激な血圧低下・起立性低血圧によるショック(悪心・嘔吐,顔面蒼白,冷汗,失神など)
・AST・ALT・AL-P上昇
・胸膜線維症,肺線維症
・幻覚・妄想,せん妄,錯乱
・胃・十二指腸潰瘍の発現・悪化
・悪性症候群(発熱,意識障害,無動無言,強度の筋強剛,嚥下(えんげ)困難,頻脈,発汗)
・胸水,心膜液,胸膜炎,心膜炎
・心臓弁膜症
・けいれん,脳血管障害,心臓発作,高血圧
・後腹膜線維症(背部痛,下肢浮腫,腎機能障害など)
・突発性睡眠
・アレルギー症状(発疹,かゆみなど)
・脱毛,夜間の脚のけいれん,寒冷による指趾の蒼白
・尿失禁,帯下(おりもの)増加
・衝動制御障害(病的賭博,病的性欲亢進)


人工授精、体外受精、タイミング法
注射薬 hMG製剤・FSH製剤
無月経や排卵障害が原因で排卵がうまくいかなかったり、それが原因で不妊が見られる場合に使われる注射薬です。
ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)は、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種で、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」の2つがあります。
エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの産生・分泌に大きく関わっています。
また、FSHは卵胞の発育を促し、LHは排卵を誘発するなど、排卵に至るまでのプロセスでゴナドトロピンが重要な役割を果たします。
この2種類のゴナドトロピンの作用を、hMG製剤とhCG製剤の注射を打つことで補い、排卵を誘発するのが、ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法です。
hMG製剤を投与期間は、超音波検査で卵胞の発育状況を観察します。
卵胞の直径が18mm程度まで大きくなり、卵胞が充分に成熟したと判断したら、hCG製剤を投与して排卵を促します。
通常、生理が始まった日を1日目として、3~5日目からクロミッドやhMGを投与したあと、10~14日目にhCG製剤を注射し、排卵を促します。
hMG製剤やFSH製剤だけで使用されることもありますが、クロミッドの効果をより高める目的で補助的に使われることもあります。
(※hMG製剤とFSH製剤は、FSH(卵胞刺激ホルモン)と同じ作用を持つ注射薬で、卵胞を発育させる作用があります。)

hMG製剤 hMG製剤は、閉経後の女性の尿から抽出・精製された薬で、FSHとLHの両方を含みます。
製品によって、2つのホルモンの含有比率は異なります。
FSH作用があるhMG製剤を投与し、充分な大きさまで卵胞が発育します。
精製hMG製剤(FSH製剤)は、hMG製剤からLH成分を取り除いたものです。

hCG製剤
hCG製剤は、妊婦の尿から精製されたものです。
LH作用を持つhCG製剤を投与し、排卵を誘発します。
クロミッドやhMG注射で卵胞を発育させたあとは、卵胞が成熟した段階でLHの作用が必要となります。
そこで使われるのが、LH作用を持つhCG製剤です。

種類によっては自分で注射できるタイプもあり、通院の負担を軽減できるというメリットがあります。
ゴナドトロピン療法はクロミフェン療法と比べて妊娠率が高いという長所がある一方で、流産率も高いという懸念点もあります。

副作用
・「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」が起きる場合がある
・多胎児妊娠(妊娠高血圧症候群などの合併症や、流産・早産リスクが高まるため、注意が必要)
・血栓症
・脳梗塞
・卵巣破裂
・卵巣茎捻転
・呼吸困難
・肺水腫


点鼻薬 スプレキュア(ブセレキュア)

点鼻薬タイプの薬です。脳に働きかけFSHとLHの分泌を促します。
スプレキュア(ブセレキュア)は「GnRH誘導体製剤」の一種で「GnRHアゴニスト」とも言います。
GnRHアゴニストは、脳の視床下部から分泌されるGnRH(Gonadotropin Releasing Hormone)の誘導体で、FSHとLHという性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌を抑制します。
スプレキュアは元々、子宮内膜症や子宮筋腫という子宮疾患の治療に用いられてきました。
「偽閉経療法」といって、スプレキュアを使ってエストロゲンの分泌を閉経時同様まで下げることで、月経を停止させ、子宮内膜症や子宮筋腫の病変の悪化を防止し、また縮小・萎縮効果も期待できます。
また、スプレキュアを使うことで、「GnRHの分泌を抑制する」や「GnRHの分泌を一時的に増加させる」作用があるという点があります。
排卵誘発と排卵誘発は相反する効果となりますが、スプレキュアは使い方によってこの2つの効果を発揮することができる薬です。
使い方の違いは、スプレキュアを使用する期間の長さです。
長期間使用すると「排卵抑制」が働き、短期間使用すると「排卵誘発」が働くという仕組みです。

長時間使用
体外受精において、なぜ排卵を抑制させる必要があるかといいますと、体外受精ではある程度多くの質の良い卵子を一度の周期で採卵したいという目的があり、スプレキュアで排卵を抑制しながら卵巣内の複数の卵胞が成熟するのを待つためです。
また採卵では、排卵直前の卵胞から卵子を採る必要があるため、排卵時期を適切にコントロールする必要があるので、意図しないタイミングで排卵しないようにするスプレキュアの役割は大切になります。

短時間使用
使用開始当初は、GnRHの分泌量が一時的に増える「フレアアップ」という現象が起こります。
GnRHの分泌量が増えるということは、FSH・LHの分泌量も増えます。
排卵する際には「LHサージ」というLHの分泌量が一時的に増えてから約36時間後に排卵する仕組みになっているため、GnRH分泌量増加に伴うLH分泌量増加(=LHサージ)を起こして排卵させるのです。

副作用
・頭痛
・眠気
・太る
・アナフィラキシーショック症状
・うつ症状
・脱毛
・心筋梗塞、脳梗塞
・ほてり
・胸の張り
・更年期障害様症状

これからも新しい薬が作られると思いますが、作用機序はそう変わることはないかと思います。